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〜 三洋電機 有利発行 〜

経営再建中の三洋電機は24日、臨時株主総会を開き、米ゴールドマン・サックスグループなど3社への3000億円に上る第三者割当増資や増資引受先から5人の取締役を受け入れる議案などが原案通り了承された。
経営悪化の責任をとり、創業家出身の井植敏・代表取締役が取締役を退任した。
今後の焦点は赤字続きの半導体や白物家電などの事業構造改革に移る。
株主総会では優先株の発行条件について株主からの質問が集中。
普通株換算で1株70円と市場価格を大幅に下回る有利発行になることから「長年、支援してきた株主にも70円で割り当てるべきだ」など不満の声が相次いだ。

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安くなった株をさがし、「価値」に比べて「価格」が低いバリュー株に対する投資を好む大株主としては、かねてから経営が傾いていた三洋の動向や株価はやや気になるところであろう。

2,3年ほど前、企業再生型投資ファンドが結構な数の再建中企業に対して投資を行っていた。
経営難の会社に対して市場での株価よりも格安の値段で第三者割当増資を引き受け、再建に成功し、株価が十分に上がったところで売り抜ける手法は一部の投資ファンドで定着したが、その後、景気の上向きに従って投資対象となる経営難の会社数が徐々に減少したため、しばらく投資会社としてはこれはと思える再生銘柄には出会えずにいた。
しかし、今回、三洋電機が市場価格(株価)よりもかなり低い価格で第三者割当増資を行うことになった。久しぶりの大型再生銘柄といったところである。

本件の流れは以下のようではないかと想定される。

三洋のメイン銀行はSMBCである。三洋は経営難に陥り、銀行に対する返済が難しくなったため、 SMBCに対して力関係が弱くなっている。
結果として、三洋は実質的にSMBCの支配下(SMBCの言いなり)になっている。

かくして三洋はSMBCグループ配下で再生を実行されることになる。
SMBCは関連会社である大和SMBCに再生投資案件として持ち込んだ。
またゴールドマンサックスはSMBCグループの増資を過去に引き受けている経緯もあり、SMBCとは親密な投資銀行である。
そのため本件はSMBC、大和證券SMBC、ゴールドマンサックスの3社で進められることになった。

次に増資資金の3000億円についてであるが、以下の理由が考えられる。

  1. 実態債務超過額の穴埋め
  2. リストラ資金(退職金資金など)
  3. 新しい事業の研究開発と設備投資

1年〜2年ほど前の企業再生のための増資は上記1と2の理由から増資額が 決定されることが比較的多かった。

次に問題の株価についてであるが、通常ゴールドマンサックスなどの投資会社においては当然ながら、投資対象会社(ここでは三洋)に関する精査(デューデリジェンスという)が行われ、こと細かい内部資料を読み漁り、三洋内部のことはほとんど把握している。
そして、三洋の経営陣とも数回の事業計画に関するインタビューを行い理論株価を算定している、

この長期間に渡るデューデリジェンスから導き出された理論株価にこの70円は近いか遠いかは別として、ゴールドマンサックスとしては損をすることはほとんどありえない価格である可能性は非常に高いだろう。
経営難の三洋の心情としてはメイン銀行との力関係は非常に弱くなっており、会社存続のためにはSMBCグループの言いなりにならざるを得ない状況であると想定される。
従って発行価格の70円は、ほぼゴールドマンサックス、大和證券SMBCの言い値で決まっていると考えられる。

当事者間の協議内容は、おおむね増資総額はいくらにするかという点と増資後は誰がどれぐらいシェアを取るかという点に絞られており、一株あたりいくらで新株発行するかはそれほど重要視されていない。

一般的に好材料なニュースにより、現状の270円前後の株価が上がることはよくあるが、投資銀行が考える「理論的な」株価は70円〜270円の間であり、おそらく70円という値段はとんでもなく安い価格であると考えられる。

上記のような市場価格(株価)よりも低い価格で第三者割当増資を行うことを「有利発行」というのだが、有利発行については商法280条の2に規定されており、特に有利な価格で既存株主以外の第三者に新株を発行するには株主総会の特別決議が必要となる。

「長年支援してきた株主にも70円で」という意見が新聞記事から散見されるが、本当に「支援」をしてきたのかは定かではない。

株主には常に出資金額の範囲内でのリスクと取締役を通じて経営を監視する責任(株主責任)があり、今日買った株式が明日には紙くずになる可能性はあることを忘れてはいけない。

そして投資後についてであるが、投資後はゴールドマンサックスと大和証券SMBCから人材を役員として派遣し、経営計画達成に向け、助言等を行い、企業価値向上に邁進する。
そして株があがったところで投資会社は株を売却するというシナリオである。

投資銀行の投資機関は3年〜5年程度と考えられる。
三洋は電池などコアコンピタンスを持っており、おまけに新株発行株価が低いため、これは投資会社にとっては非常においしい案件と言えるだろう。

テクニカル投資家やデイトレーダーは別として、中長期の大株主となるためのケーススタディーはほぼ毎日新聞から拾うことができる。

是非読者の皆様には当事者が何を考え何のために行動したか、結果として誰が損をして誰が得をしたのかを考えながら記事の「行間を読む」ことをお勧めしたい。

新聞の「意見」は耳に入れるとして、事実だけは抑えておき、裏にある当事者の心を考えることは大変頭を使い、疲れることではあるとしても株式投資の感覚(根本的にはビジネス感覚)を養う上で欠かせない。
悲しいことであるが結局は相手の気持ちがよめなくなった方(またはよむのをあきらめた方)が株式投資やビジネスの世界では必ず損をするのである。


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